質問<2319>2005/5/1
from=ro-ninsei
「自然対数の底」
自然対数の底を使う事の利点を教えて欲しいです。 自然対数の底が「公式として」ではなく、どのような「意味」を持っているのかは、 任意の指数関数のグラフで見ると y=a^xのy=1での接線が傾き1になる時a=e=2.718281828459…になるって事は 分かるんですよ。 ただ数学を勉強していて、いろいろな所で見かける「自然対数の底」がなぜ 重宝されているのか?その理由も関連付けて教えて欲しいです。 よろしくお願いします。 ★希望★ヒント希望★
お便り2005/5/2
from=亀田馬志
ほいほい(笑)。なるほど。ごもっともな質問だと思います(笑)。 ええと、まず『対数』自体の登場時点でのハナシですが、元々便利に重宝されてた のは『底が10』、いわゆる『常用対数』なんですよね。何故かって? 元々『対数』自体は商人に重宝されてた経緯があって、要するに『複利計算』がや り易かったからなんです。省略で『10の何乗』とか出てきたトキ便利だったからで すよね。そう言う『歴史的経緯』から見ると、『自然対数の底』、いわゆる『ネピ ア数』が頻出して来たのは割と(数学自体の長い歴史から見ると)最近の現象なんで す。ハッキリ言っちゃうと、比較的新しい数学、つまり『微分法』が出てきてから 自然対数の低が重宝されはじめたんです。まずそこを押さえておいて下さい。 僕は数学自体は苦手なんですが、敢えて『実用数学』的な発言をすると、特に『物 理』に関係してる『微分方程式』に絶大な威力を発揮するのが『自然対数の底』で す。いくつか列挙してみます。 ①ネピア数を底とした指数関数は何度微分しても積分してもカタチが同じである。 コレがまず『微分方程式の解法』に絶大な威力を発揮しました。この『金太郎飴』 の様な性質が、微分方程式を『解き易く』してくれたんです。 ②三角関数との関連性が深い。 いわゆる『複素平面=ガウス平面上』で、指数関数と対数関数は密接な関係を持っ ています。有名なオイラーの公式 ・e^(iθ)=cosθ+isinθ がありますよね?コイツのお陰で『複素数』の研究がムチャクチャ進みました。ネピ ア数が利用されてなければ『複素平面上』での『微積分』の研究も進まなかった事 でしょう。(って事は微積分の簡易化も進みませんでした。) ③懸垂曲線の存在を教えてくれた 例えば一本のロープがあるとしますよね?右手と左手でそれぞれ端っこを持って中央 の部分を垂らしたとします。このトキ『重力で弛んだロープのカタチ』ってのが『ど んな曲線なのか?』ってのが長い間謎だったんです。数学者も物理学者も『2次関数な んじゃねえの?』って思ってたんです(笑)。 実は『双曲線関数』って関数が存在します。非常に『演算の形式上』三角関数に似た 性質がある。(曲線のカタチが、ってワケじゃないですよ、念の為。) 次の様に定義されます。 ・sinhx={e^x-e^(-x)}/2 ・coshx={e^x+e^(-x)}/2 ・tanhx={e^x-e^(-x)}/{e^x+e^(-x)} =sinhx/coshx ちなみに『sinh』は『サインエイチ』じゃなくって『ハイパボリックサイン』って読 みます。以下『ハイパボリックコサイン』『ハイパボリックタンジェント』ですね。 まあ、そう言った『自然対数の底』を利用した指数関数を用いて定義される便利な関 数があります。 コイツらにも次のような『性質』が付加されています。 ・(coshx)^2-(sinhx)^2=1 そしてやっぱ『加法定理』が成り立ってるんです。 ・sinh(α+β)=sinhαcoshβ+coshαsinhβ ・cosh(α+β)=coshαcoshβ+sinhαsinhβ んでついでに次の『微分公式』があります。xに対しての『微分演算子』をDとして、 ・Dsinhx=coshx ・Dcoshx=sinhx 三角関数そっくしでしょ(笑)? まあ、こう言った『ネピア数絡み』の便利な関数のお陰で、例えば今まで積分し辛か った『置換積分』なんかも非常に簡単に解けるようになってます。(オーソドックス なテで“三角関数に拠る”置換積分で解けない様な積分もハイパボリックだと簡単に 解けたりします。) 大体こんなモンかな?要するに『ネピア数』の登場で随分『数理科学』ってのは『見 通し』ってのが良くなったんですよね。(要するに関数を扱う問題が平易になりまし た。)だから『慣れてください』ってのがあるんでしょうね。 確かに『日常生活レベル』ではあんま関係無いんですがね(笑)。
お便り2005/5/3
from=honda
微分しても変わらない (e^x)'=e^x ということがすべての根源といえます. これでうれしいことはいっぱいでてきます (1)定数係数線形常微分方程式なんかは 解析的に解けますし, 関数係数でもそれなりにアタックできます (2) e^x=1+(1/1!)x+(1/2!)x^2+・・・+(1/n!)x^n+・・ なんていう風に展開できます これをじっくりみると e^x=cos(x)+isin(x) なんて公式ができますが,複素関数論では これはもっとも基本の公式です. (3) (log_e x)'=1/x 1/xのような簡単な関数の積分も 自然対数がないと扱えないです. (4) (2)の級数を行列に拡張して 行列Aの指数行列e^Aなんてのも定義できます. これを使うと連立線形定数係数常微分方程式が 簡単に解けます. この方面だと無限次元の線形代数とか 量子論の方につながっているはずです (この方面は詳しくないんで詳細はパス) 個人的には(2)あたりから, 正則関数の話にいって ローラン展開やら留数や特異点なんていう 幾何のメインテーマの一つに 流れ込むあたりは綺麗だと思います.
お便り2005/5/3
from=wakky
興味深いページを見つけました。 http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/reminder.htm